【赤】 孤児 ルナ (kiiron)
「なんとか今日は吊られずに済みそうだわ……」
安堵からか軽くため息を吐いて、ハンガーにかけてあるレインコートをつかみ、袖を通す。
黒みがかったレインコートはよくよくみると、ところどころ赤く黒ずんでいる。
「イリス……彼の占える能力は脅威だわ」
フードを深々と被り、ドアノブに手をかけた。
イリスの部屋に向かう途中、アニーの部屋の前を通り掛かった。
アニーは息絶えたのだろうか、昼前にはまだくぐもった声がしていたが今は何も聞こえない。
ーーネイは、ネイの部屋はどうなんだろうか。
アニーの部屋から少し離れたところにあるネイの自室に向かい、耳をそばだてる。
「ふっ……そうだよな、戻ってきているわけがない」
口元に一瞬、笑みを浮かべた後、真一文字に唇を噛み締めた。